いわゆる抗がん剤の投与です。
癌の種類によって効く種類は変わるし、癌が耐性を持つ場合も多々あります。
通常は数種類の薬を併用することが多いです。
血液の癌は基本的には抗がん剤の適用となります。
良い点は長い間使われている薬が多く、挙動や効果が知られている分、
副作用の予測や対応が比較的しやすい事です。
難点はやはりその副作用の強さと癌の種類によっては抗がん剤が無効になる点、
そしてあまり知られていないのは、(人間でもそうですが)、
投与されている動物からは少ないですが抗がん剤が排泄されている
ということです。
影響は未知ですが、
幼い子供がいらっしゃる家庭では推奨できないかもしれません。
点滴で入れる種類のうち、血管外へ漏れると非常に危険な薬物もあります。
そのため動物では動きの激しい子は薬物による沈静が必要な場合もあります。
なんだか悪い点が目立ちますが、悪性リンパ腫の種類の中には抗がん剤が良く効く場合があります。
いままでも、そのおかげで数年楽しく過ごせたという子も何頭もいました。
一概に悪者扱いするべきではないと思います。
要は状態と環境を踏まえる事ですね。
最近では「分子標的薬」という分野の抗がん剤が台頭してきています。
人間の方では多くの抗がん剤は分子標的薬へシフトしてきています。
分子標的薬の良い点は一般の抗がん剤より副作用が少ない(とされている)点と、
癌細胞の特定の遺伝子や蛋白に直接作用するので正常細胞への作用が低く、効率が良い点です。
難点は遺伝子検査で「変異」がある場合でないと効果が低くなること、時に予期できない副作用が出ること、服用し続けないと再発が多いこと、動物ではまだまだ利用が少ないこと、
そのため動物では効く癌がまだはっきりは分かっていない事などがあります。
また、一般の抗がん剤と同様に耐性ができる場合もあります。
この系統の薬はこれからの癌治療を変える可能性を秘めていますが、
まだまだ動物への情報や経験が不足しています。
一刻も早く各動物への多くの適応が望まれます。
NSAIDs
いわゆる、非ステロイド系消炎鎮痛剤です。
癌細胞は分裂時にアラキドン酸がらプロスタグランジンを多く生成し、
これにより炎症反応、血管新生、疼痛などを引き起こします。
NSAIDsはプロスタグランジン生成の手前でCOX2という生理活性物質を阻害します。
犬の膀胱移行上皮癌などで特に有効に働き、癌の縮小や成長阻害が可能です。
他の種類のがんにもある程度効果が期待できる薬です。
また、癌性の疼痛の緩和にも役に立ちます。
欠点は、用量を多く飲みすぎると胃潰瘍になったり、腎不全の子には使えない、
ステロイドとは併用服用できない、などがあります。
科学的な根拠と実績もあるので、
一般に抗がん剤を使わないときはよく選択される薬です。
副作用の少ない軽い抗がん薬剤と言えます。