これは病気の一つですので病気の欄に入れるものですが、
知るべき大切な情報ですので、あえてトップ項目に入れておきました。
ワクチン反応性肉種とは、非常に稀な病気ですが、
ワクチンを接種した箇所が肉腫(癌)化してしまう病気です。
基本的には猫に発生し、ワクチン関連性肉腫、ワクチン部位線維肉腫、などと言われますが同じ病気の事です。
悪性度が高く、かなりの確率で再発し、治療が非常に難しい癌です。
抗癌剤の効果も今だ不明で、四肢での発生は基本的に断脚が第一選択となります。
ワクチン接種部位に接種後数ヶ月~数年後に発生することもあります。
その原因は
「多くの不活化ワクチンの中に入っている、免疫賦活剤のアジュバント」、
「白血病ワクチン」
「ウイルスの存在の有無」
「サイトカインの種類や量」
等々、様々検討されましたが、
現在確実にこれが原因であるという確証は示されていません。
また、ワクチンだけでなく、
猫にはどの注射も同じような癌を発生させる可能性があります。
これは猫の免疫機構が犬など他の動物と違っていることが大きな要因です。
科学的な事実としてワクチンは「免疫反応を起こす」ものです。
それによりウイルスなど感染症への免疫力を高めるのが目的だからです。
このため、ワクチンの方が他の薬物より線維肉腫を発生させるリスクが高いのです。
現在の多くの見解では、この癌は
猫の持つ独特な異物への反応が、
ワクチンなどの薬物に対して起こす、発生予測不可能な癌
と言えます。
ですから、ワクチン接種の際には少しでも癌のリスクを減らす努力が必要です。
特に、肩甲骨の間でのワクチン接種はリスクが高く、現在では推奨されません。
そのため、背中、後肢、尾などに接種することが普通になってきました。
ただ、そのあたりは注射するとちょっと痛いんですけどね。
また、ワクチンの種類によってはアレルギー反応が出やすい種類も存在します。
安売りだったり期限切れだったりすると余計な不純物も増えますし、
精製がずさんだと反応が強く出る可能性があります。
<犬など猫以外のワクチン>
では犬はワクチンによる肉腫は無いのでしょうか。
答えは「ゼロでは無いのですがほとんどありません。」です。
稀に注射部位が腫れる場合もありますが、2~3ヶ月で沈静化することがほとんどです。
フェレットもワクチンを打ちますが、犬と同じです。
ただ、犬に比べてアレルギーが出やすいかもしれません。
<猫のワクチンの打ち方>
では、どのようにすれば癌のリスクをへらし、
かつ、感染予防できるのでしょうか。
上記の事を踏まえて当院ではリスクを減らすため、以下の事を実施しています。
1,肩甲骨の間へは注射しない
2,毎年打つ場所を変える
3,アジュバントの無いワクチンを使用する
4,信頼できる会社のワクチンを使用する
5,摂取した場所が腫れてきたら観察・治療を続ける
<猫はワクチンを打たない方が良い?>
では、癌のリスクを避けるため、
ワクチンを打たないという選択肢はどうでしょうか。
最終的には飼い主さんの意志ですが、
私は飼育環境によって選ぶべきだと思います。
特に頻繁に外へ出る猫は、強くワクチンをお勧めします。
なぜなら、今の日本では、外に出て感染症で亡くなる確率のほうが、
ワクチンによって癌が発生する率よりかなり高いからです。
もちろん、ワクチンで予防できない感染症もたくさんありますが、
予防できるウイルスと重複して感染すると症状は重篤になります。
では、100%家の中だけの猫はどうでしょうか。
私は、
●多頭飼い
●乳幼児・幼児・免疫力の低い人が家族にいる
●出かけるときに知り合いやホテルに預けることがある
に当てはまる家庭では、ワクチンを打つ方が良いと思っています。
その理由です。
まず多頭飼いは感染症を伝染し合うので治りにくくなるからです。
外に出なくても外からウイルスが入らないわけではありません。
入ってくる機会が少なくなるだけです。
そして、一旦ウイルスなど感染が広がると症状が強くなりやすいのです。
特にヘルペスウイルスは二階にいても一階の猫から感染するほど感染力が強く、
同じ家の中では隔離の意味がほとんどありません。
ワクチンが便利です。
乳幼児など免疫力の低い人がいると、感染症そのものはまず伝染らないのですが、
鼻水、嘔吐物、下痢など不衛生になりがちで細菌繁殖の温床になりやすいのです。
家の人達の健康のためにも、ワクチンは考慮すべきです。
どこかへ預けるという事は、今までには無かった感染源があるかもしれません。
もちろん、症状は出ていないが感染源となっている動物もいる可能性があります。
最近のペットホテルなどはワクチン接種が無ければ預けられない所がほとんどなので、利便性を考えるとワクチンを使ったほうがいいでしょう。
以上に当てはまらない場合はワクチンを打たないという選択肢もあるでしょう。
また、猫によっては持病が重いなど来院やワクチンが負担になりそうであれば、
無理しない方がいい時もあります。
打つ間隔も推奨する期間は1年ですが、アメリカなどは3年とする時もあります。
日本での注射の種類や環境とは違うので、本当は比べられないのですが、
気になる方はご相談下さい。抗体価を測っておおよその間隔を決めるやり方もあります。
ワクチン接種は、漫然とワクチンを打つのではなく、ご家庭の環境をふまえ、
より良い選択をするということが、重要だと言えます。