ポコっと盛り上がってきたり、イボのようなものが出来ると、ついつい腫瘍?と思います。
確かに腫瘍である場合も多いのですが、やはりそうとも限りません。
この子は額の盛り上がりで来院されました。
ちょっと分かりづらいですが額の骨が溶けてます。
何かの腫瘍かな?と思いがちですが、
そうとも限りません。
触っても痛がる様子もなく、腫れている部分はやや硬く、腫れている以外に症状はありません。腫瘍もよくありますが、ここで必ず確認が必要です。
同じような状態でも違う原因がよくあるからです。
この子は鎮静剤と鎮痛剤の注射をしてから、腫れた部分の細胞を少し取りましたが腫瘍のような細胞は出てきませんでした。膿もほとんど無く、炎症を起こす細胞と粘液のみが採取されました。
ですが、腫瘍や膿が深くにあったり、炎症の影響で偏っていて、今回だけ採取できなかった可能性もあります。
そこで、腫れている部分の中を洗浄し、薬で腫れを取り、日を改めてもう一度腫れた部分の中を調べると・・・
左の写真は膿です。今度は大量の膿が出てきました。
おそらく炎症で偏っていたのでしょう。
まだこの膿を確認する必要があります。はたしてこの膿は「何の膿」かが治療の分かれ目になるからです。
そこで、膿を少し染色して顕微鏡で見ると、右の写真のように見えました。
結果、これはいわゆる「カビ」でした。
つまり、この子は腫瘍でもなく、細菌感染による膿でもなく(厳密には二次感染していますが)、カビによる感染を起こしていました。
このように、猫では犬に比べてこの部分の腫れが比較的多めに見られます。
それも原因は多彩で、腫瘍だったり、細菌だったり、カビだったりします。
色んな検査と処置を重ねることで、正確な診断と治療ができます。
腫れてても腫瘍とは限らないという事ですね。
ちなみに感染していたのは副鼻腔ですが、クシャミや咳などの症状も全くありませんでした。
今では膨らみも全くなく、男前の顔を取り戻しました。
よかった、よかった。